046-871-3883
午前 9:00 - 12:00 午後 15:00 - 19:00
(休診日: 木曜日・日曜日午後・祝祭日)

046-871-3883

rabies

狂犬病は犬だけでなく人間や猫などを含むすべての哺乳類に感染します。いまだ治療法がなく、一度感染すると99.9%死亡する恐ろしい病気です。日本国内では1956年を最後に発生していませんが、東南アジアなどの近隣諸国では現在でも死亡者が絶えない感染症です。

法律で義務つけられた唯一のワクチン

狂犬病予防法では、生後90日以上の犬の所有者に下記が義務付けられています。

  • 狂犬病予防ワクチンの接種
  • 市町村への飼い犬登録
  • 犬の鑑札と注射済票を受け取ること

もしも、狂犬病予防ワクチン未接種の犬が人間を噛んでしまった場合、安楽死を免れません。万一のことを考え、狂犬病予防注射は必ず受けるようにしましょう。

原因

狂犬病は狂犬病ウイルスに感染することで起こる病気です。狂犬病ウイルスに感染した動物に咬まれたり、感染した動物の唾液とヒトの傷口が接触したりすることで感染が成立します。犬に咬まれて発症する症例が全体の9割以上を占めているとされますが、狂犬病ウイルスは犬以外の動物からも確認されています。たとえば、アライグマ、スカンクス、キツネ、コウモリなどの野生動物に咬まれることでも感染が成立します。

症状

感染後、症状が出るまでの潜伏期間は1か月~3か月といわれています。潜伏期間は、咬まれた部位や、体内に侵入したウイルスの量などにより変わると考えられています。咬まれた部位の局所症状としては、痛み、しびれ、感覚麻痺、やけどの後のようなピリピリした感覚異常などが挙げられます。

犬病の初期症状には、発熱、頭痛、筋肉痛、悪寒など、インフルエンザなどでもみられる症状があります。このような症状は通常数日から1週間程度続きます。

進行状況

狂犬病ウイルスが増殖して神経系に侵入すると、興奮、意識障害、錯乱、幻覚などの神経症状が起こります。狂犬病で生じうる特徴的な症状には、以下のものがあります。

  • 恐水症:水を飲むことを恐がる、水が恐くて手が洗えない
  • 恐風症:空調の風などを嫌がるなど

その後、数日の経過で全身けいれんや不整脈が起き、全身の臓器に障害が起こり、死に至ります。このほか、典型的ではない狂犬病の症例として、全身の麻痺が目立つものもあります。ゆっくりとした経過を辿り、典型的な狂犬病と異なるため診断が難しいケースもあります。

予防

狂犬病に感染する可能性がある国などで、犬やその他の動物に咬まれた場合は、曝露後予防措置を行います。曝露後予防措置とは、(1)石鹸と流水による傷口の十分な洗浄、(2)曝露後ワクチン接種、(3)咬傷部位への抗狂犬病ウイルス免疫グロブリンの投与の3種からなります。いずれも迅速(24時間以内)に開始する必要があります。曝露後予防措置をすべて迅速に行った場合の効果は非常に高いと考えられています。ただし、抗狂犬病ウイルス免疫グロブリンが利用できる地域は限られているため、その点にも注意が必要です。流行地域に赴く際には、事前の予防接種を受けることが大切です。また、特に海外ではむやみに犬などに近づくことは控えなければなりません。

狂犬病の現状

狂犬病は過去に日本でも流行し、1920年代には年間およそ3500人が亡くなりました。農林水産省によれば、1923~1925年には犬も約9000頭が死亡しております。

1950年に「狂犬病予防法」が施行され、飼い犬の登録や予防接種の徹底、野犬等の捕獲などを行ったことにより激減し、国内での人間の感染例は1956年の1人が最後となっています。同年に6頭の犬も犠牲になったほかは、翌1967年の猫1匹以降、日本では報告がなく狂犬病予防法は施行後7年でこの病気の撲滅に成功したのです。

発症も、1970年にネパールで、2006年にフィリピンで犬にかまれた日本人旅行者2名が帰国後に発症・死亡した合計3例以外はありません。

2020年6月、愛知県に住んでいた外国籍の30代男性が狂犬病で亡くなりました。豊橋市の発表によれば、検出された狂犬病ウイルスはフィリピンで流行しているものと非常に似ており、来日前の2019年9月に現地で犬に噛まれたことが原因と見られています。日本における狂犬病の発症例は、2006年にフィリピンで犬に噛まれた旅行者2名が帰国後に発症・死亡して以来14年ぶりのことです。

狂犬病予防注射の接種に対する意識

厚生労働省の資料によりますと、平成30年度(2018年)には全国で622万6615頭の犬が登録されています。その年の狂犬病注射済票は444万1826枚が発行されており、接種率は71.3%とされています。ウイルス学専門家の間では議論もあるようですが、WHO(世界保健機構)のガイドラインによれば一般的にワクチン接種率70%がウイルスのまん延を防止できる目安とされています。

全国的に見ますと狂犬病の予防は順調と言えますが、都道府県では大きなばらつきがあります。接種率が顕著に高いのは東北地区で、全国トップの山形県では90.8%に達します。そのほか、青森県と岩手県では87%を超え、最低でも秋田県の80%と全国平均を大きく上回っています。冬が厳しい地域の接種率が高い傾向がある様で、このほか長野県が89.8%、新潟県も88.5%となっています。

大都市圏を見ると、関東では埼玉県の70.1%から千葉県の72.3%、東京都の73.6%、神奈川県の75.9%とすべて70%を超えています。東海地区はさらに高水準で、愛知県が75.8%、静岡県が78.4%、岐阜県も76.5%となっています。

関西地区では奈良県と滋賀県が70%を超えている一方で、大都市のある自治体での接種率が低く、大阪府が61.2%、兵庫県が66.7%、兵庫県が66.7%にとどまっています。また九州最大の福岡市と北九州市を抱える福岡県が57.7%と低迷しています。そのほか沖縄県と香川県も50%台にとどまっています。

狂犬病予防接種の必要性

国内を起源とする感染は長く発生していませんが、WHOの推計によるといまだに世界で年間5万人以上が狂犬病で亡くなっています。日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド以外では今でも発生しており、海外から船で上陸して検疫をくぐりぬける動物も存在するため、愛犬の感染を100%排除することはできません。

愛犬や飼い主はもちろんですが、地域コミュニティー全体を守るためにも感染症予防は重要です。狂犬病予防法の存在に関わらず、責任ある飼い主の行動としても定期的な予防接種を行ってください。